こんにちは。健康福祉部長の小野啓輔です。
去年、友人の結婚パーティーでダンスを踊りました。
10人ほどのダンシングチームを結成、
当日へ向けて、何回か合同練習をし、
その合間には、DVDを見ながら自主トレをしました。
最近のダンス練習用のDVDは、「鏡バージョン」という
左右反転の映像まであり、先生が左右逆で踊ってくれるため、
見たままに手足を動かすと、正しい振り付けになるよう工夫されています。
また、本来のスピードの80パーセントから50パーセントまで動きが
ゆっくりになるバージョンもあり、まさに、いたれりつくせりです。
え、何を踊ったかって?
ここだけの話、絶対ないしょですが、
AKBとKARAです・・・。
今日のテーマは、「社会保障と税の一体改革」です。
年末年始のゆるんだ生活にカツを入れるため、
正月から、難しいテーマにチャレンジしています。
●政府が素案を発表
少子高齢化の進行をはじめとして社会経済状況が大きく変化する中、
国民生活の安心を確保するため、社会保障改革の必要性が叫ばれてきました。
そのため、社会保障改革の全体像とともに、必要な財源を確保するため、
消費税を含む税制抜本改革の基本方針を示すべく、
政府と与党社会保障改革本部が議論を進めてきました。
その一定のまとめが、今年の1月6日に
「社会保障と税の一体改革素案」として決定され、閣議報告もされました。
この素案。全文は50ページからなる大作です。
が、新聞報道では、消費税の引き上げ部分のみが大きく取り上げられているため、
全文を読んだかたは少ないかもしれません。
私も何回かトライし、そのつど睡魔におそわれながら、なんとか読み通しました。
なぜ、こんなに読みにくいのか。
ふと、原因のひとつが思い当たりました。
目次が無い・・・。
概要版が無い・・・。
目次や概要版が見当たらないので、なかなか全体像が把握できません。
そこで、私なりに目次を作ってみました。
はじめに〜安心で希望と誇りが持てる社会の実現を目指して〜 ・・・・ 1ページ
第1部 社会保障改革 ・・・・ 5ページ
第1章 社会保障改革の基本的考え方 ・・・・ 5ページ
第2章 社会保障改革の方向性 ・・・・ 6ページ
第3章 具体的改革内容(改革項目と工程) ・・・・ 7ページ
1 子ども・子育て新システム
2 医療・介護等1
3 医療・介護等2
4 年金
5 就労促進、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現
6 貧困・格差対策の強化(重層的セーフティネットの構築)
7 医療イノベーション
8 障害者施策
9 次世代を担う子ども・若者の育成
10 地方単独事業を含めた社会保障給付の全体像及び費用推計の総合的な整理
第2部 税制抜本改革 ・・・・ 26ページ
第1章 税制抜本改革の基本的な考え方 ・・・・ 26ページ
第2章 政治改革・行政改革への取組 ・・・・ 31ページ
第3章 各分野の基本的な方向性 ・・・・ 32ページ
1 消費税
2 個人所得課税
3 法人課税
4 資産課税
5 地方税制
6 その他
第4章 税制抜本改革における各税目の改正内容等 ・・・・ 40ページ
こうして、ようやく全体像・体系がわかってきます。
この素案は、確かに消費税を平成26年4月に8パーセントに、
平成27年10月に10パーセントに引き上げる案も書かれており、
それがインパクトを持つのもわかります。
しかし全体を眺めてみると、子育て、医療・介護、年金、就労など
幅広いテーマについて、これからの方向性や具体的改革内容・工程が書かれており、
それを賄う財源についても、消費税だけでなく、他の税目の改革や、
政治・行革として、議員定数や公務員人件費の削減などにも触れています。
消費税の議論は、国民生活に直結し批判を浴びやすいテーマのため、
なかなか冷静な議論が難しいのかもしれませんが、
これからの日本社会のありかた・方向性を考えるうえで、
今回の素案は、よいテキストになっていると思います。
【内閣官房作成のパンフレット】
●注目のテーマ
このように、大事な事項が幅広く散りばめられているため、
どれも気になるテーマなのですが、私の視点から、特に注目しているのは、
期待する点、不安視している点を合わせて、次の5点です。
(1)介護
「高齢化が一段と進む2025年(平成37年)までに、どこに住んでいても、
その人にとって適切な医療・介護サービスが受けられる社会を実現する。」
これが、素案の大方針です。
介護保険の分野では、今まさに、来年度からの「第5期介護保険計画」が
全国の市町村で論議されています。昨年の介護保険法等の改正で、
基本方針である「地域包括ケアシステム」の構築と、いくつかの改革項目が
すでに出されていましたので、それに即した内容になっています。
低所得者の介護保険料軽減強化、介護納付金の総報酬割導入、
医療・介護・保育等に関する自己負担の「総合合算制度」の創出など、
具体化の時期が気になる項目もありますが、
先般、1月24日に召集された第80通常国会に、はたしてどのような法案が
出されるか、注目する必要があります。
なお、箕面市の介護保険検討の概要については、
次のホームページなどをご覧ください。
(2)年金
年金については、税を財源とする「最低保障年金」と、社会保険方式の「所得比例年金」
の組み合わせからなる一つの公的年金制度に、すべての人が加入する新しい年金制度の創設が方針化されています。
職種を問わずすべての人が同じ制度に加入し、所得が同じなら同じ保険料、
同じ給付、最低保障年金と所得比例年金の合算で、だれもが概ね月に7万円以上を
受給できるなど、かなり踏み込んだ表現がなされています。
国民的な合意に向けた議論や環境整備を進め、平成25年(2013年)の国会に
法案を提出するとなっています。
なお、現行制度の改善についても触れられており、これも法案の公表が待たれます。
(3)雇用
誰もが働き、安定した生活を営むことができる環境を整備するため、
就労促進、貧困・格差対策の強化など、重層的なセーフティネットの構築が
めざされています。
特に注目したいのは、「ディーセント・ワークの実現」です。
またまたカタカナ語で恐縮なのですが、ディーセント・ワーク、
素案では「働きがいのある人間らしい仕事」と訳されています。
この言葉は、労働や障害者雇用などの分野で、10年ほど前から使われるように
なりました。実は、第5次箕面市総合計画のパブリックコメントでも、
この「ディーセント・ワーク」に関する提言がなされたことがあり、
箕面市民のかたにも関心が高い言葉です。
これが、政府の公式文書に載りました。私は、個人的に画期的なことだと思っています。
具体的施策がまだ弱いのが難点ですが、労働政策審議会の議論を踏まえ、
必要な法案を平成24年通常国会へ提出するとされているため、
今後の展開を注目したいと思います。
(4)生活保護
生活保護については、「生活困窮者対策と生活保護制度の見直しについて、総合的に
取り組むための生活支援戦略(名称は今後検討)を策定する。(平成24年秋目途)」
とされていますが、詳細は不明です。
生活保護については、長期にわたる景気の低迷と雇用環境の冷え込みにより、
受給者が毎月急増を繰り返し、全国的に過去最多を更新しています。
そのため、国や政令指定都市などで制度見直し論議がなされていますが、
まだ成案には至っていません。今回の素案でも、総合的に取り組むため、
結論を今年の秋に先送りした形になっています。
秋に向けた「生活支援戦略」がどのようなものになるのか、まだ不明ですが、
就労・雇用対策とともに、日本社会の大きな課題になっています。
(5)障害者施策
障害者施策については、「制度の谷間のない支援、障害者の地域移行・地域生活の
支援等について検討し、平成24年通常国会に法案を提出する。また、障害基礎年金への加算に加え、障害者の就労を支援し、障害者の所得保障や社会参加の充実を図る。」とされています。素案において障害者施策は、極めて少ない記述になっています。
障害者施策については、昨年「障がい者制度改革推進会議」において、
「障害者総合福祉法の骨格提言」がまとめられています。
これは、障害当事者・家族・事業者・学識経験者など総勢55名からなる
総合福祉部会が、18回の全体会合と8つの作業チームを積み重ねて
まとめ上げたものです。国は、この骨格提言を踏まえて、平成25年(2013年)8月までに
新しい「障害者総合福祉法」を制定・実施することを閣議決定しています。
そのための法案が、今年の通常国会に提案されるだろうということで、
多くの人々が、骨格提言が法案にどの程度反映されるのかを固唾をのんで
見守っています。その矢先に公表されたこの素案で、障害者施策に関する記述が
あまりにも少ないことから、骨格提言の実現度合いが非常に危惧されるものです。
特に素案では、「消費税収(国分)は全額社会保障4経費(年金、医療、介護、少子化)
に充てることを明確にし、社会保障目的税化する」と明言しており、
どうもここからは、障害者施策への新たな財源は確保できないように思えます。
先の「障害者総合福祉法の骨格提言」では、
「障害福祉関連予算を、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均値水準への
増額」を求めており、そのためには、少なくとも現在の2倍、約2兆2000億円の
予算確保が必要となります。
なお、箕面市の倉田哲郎市長は、国の「障がい者制度改革推進会議総合福祉部会」の
メンバーに選ばれ、部会でも作業チームでも積極的に発言されてきました。
このほど、日本障害者リハビリテーション協会発行の月刊「ノーマライゼーション」
2012年1月号に、「障害者政策委員会への期待」と題する倉田市長の論文が
掲載されました。
そこでは、障害者政策に対する国の責任と矜持、各地域の先行的取り組みの
国制度化などの基本姿勢を提言するとともに、障害者の多様な就業の機会を
確保するため、骨格提言にも位置付いている「障害者の社会的雇用」の
パイロット・スタディ実現を力強く提案されています。
【月刊「ノーマライゼーション」 2012年1月号】
●よりよい明日に向けて
社会保障と税の一体改革が、今後どのように実現していくか、
今の政局では、まったく見通しがわかりませんが、厚生労働大臣は、
社会保障関連法案を3月には揃えたいとの意向も示されており、
今の通常国会で、どのような論議がされるのか、注目していきたいと思います。
制度・政策を新しいものに変えていくことは、大きなエネルギーを必要とします。
同時に、社会変革への情熱と冷静な議論が不可欠です。
ケンブリッジ大学の初代経済学教授であるアルフレッド・マーシャル先生が、
1885年、教授就任にあたり講演された言葉があります。
「冷静な頭脳(クールヘッド)と温かい心情(ウォームハート)を持ち、
社会的苦悩を克服するために、自らの最善の能力をすすんでささげようとするのが
私の念願であります。」
Cool Head & Warm Heart
両方ともなかなか容易ではありませんが、
私もそういう姿勢をめざしたいと思います。
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