こんにちは。健康福祉部長の小野啓輔です。
年末です。
今年の漢字は「絆」。きずなでした。
東日本大震災を決して忘れず、被災者と被災地に想いを馳せ、
人と人とがつながり支え合うことの大切さを、多くの人が再認識し、
この言葉が選ばれたのだと思います。
さらには、去年に広がった「無縁社会」に対峙する言葉として、
これからの日本社会を照らす希望の光となることが期待されます。
思い起こせば、去年、住民登録がある高齢者がいつの間にか亡くなられていたり、
登録地に居住実態がなく長期間所在不明になっていたりする事例が
全国各地で相次ぎ、「消えた高齢者」とか「無縁社会」と言われました。
この出来事は、まさに家族や地域のきずなや人間関係の希薄化・孤立化など、
現代社会の問題を、新しい切り口から照らし出すこととなりました。
箕面市では、今年も昨年に引き続き、8月1日現在で満90歳以上になられた
市民のかた1277人について、所在確認を行いました。
その結果、いわゆる「消えた高齢者・所在不明高齢者」はおられないことを
確認できました。
確認に当たっては、市での内部確認を経た上で、必要な場合には、
民生委員・児童委員の皆さまに直接訪問いただくなど多大なご協力を得ました。
ここに謹んで感謝申し上げます。
今後も引き続き、高齢者がより一層、安全・安心に暮らしていけるよう
努めてまいります。
そこで、今日のテーマは、「介護保険パート2」です。
【市立介護老人保健施設「クリスマスコンサート」のワンシーンです。】
●パブコメ中〜第5期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(素案)
豊かな長寿社会を支えていくための介護保険制度。
箕面市の概要については、9月27日のブログでお知らせしました。
その後、箕面市保健医療福祉総合審議会や保健福祉計画部会などでの検討が進み、
「第5期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(素案)」を12月5日に公表しました。
そして、広く市民の皆さまのご意見をお聞きするため、
パブリックコメント(市民意見の募集)を平成24年(2012年)1月4日(水曜日)まで
実施しています。
箕面市の「第5期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画」は、
老人福祉法に定められた「老人福祉計画」と、
介護保険法に定められた「介護保険事業計画」を一体的に策定するもので、
平成24年度から平成26年度までの3年間の基本的な計画になります。
現在公表している「素案」を少しご紹介します。
●基本理念・基本目標・重点施策
計画の基本理念は、これまでも一貫して「ノーマライゼーション社会の実現」と
しています。ノーマライゼーションは、国連において示された考え方で、
高齢者や障害者、少数者など、社会的に不利を負いやすい人々を排除するような
社会は、弱くもろい社会であり、多様な人々が存在し互いに支え合い、共に生き、
共に暮らす社会こそが「あたりまえ」の社会であるという意味です。
基本目標は、高齢者の「いきいきとした暮らし」「安心な暮らし」「支え合う暮らし」を
実現することを掲げており、これもこれまで箕面市が目標としてきた方針を
継承しています。
そのための重点施策として、
(1)健康で生きがいのある暮らしの推進、
(2)地域におけるケア体制の充実、
(3)介護保険サービスの質の確保・向上と適正・円滑な運営、
(4)権利擁護の推進、
(5)安全・安心のまちづくりの推進の5点を位置づけ、
それぞれの分野で施策展開をめざしています。
施策の詳細は、素案をご参照ください。
●介護保険サービスの基盤整備と介護保険料
介護保険制度の構築ポイントは、
介護保険サービスの基盤整備と介護保険料のバランスです。
サービスの利用者が着実に増加していくことは、
介護を家族だけが抱え込むのではなく、社会のみんなで支えていこうという
「介護の社会化」が進むことでもあり、
介護が必要な人やご家族の負担軽減につながっています。
充実したサービス基盤がそろっていなければ、
介護保険サービスを使うことができません。
しかし、同時に、サービス基盤が充実し、利用者が増加していくと、
介護保険からの給付費も当然増大していくことになり、
介護保険料の上昇が見込まれてきます。
介護保険料が多少高くても、充実した介護サービスを望むのか、それとも、
介護サービス水準は低くてもいいから、介護保険料を安く抑えるのか。
人によって、立場によって、介護経験によっても、考え方が異なる難問ですが、
この選択は、全国一律ではなく、高齢化など地域の実情や住民の意識、
サービス基盤の状況などを反映して決めることができるよう、
保険者である市町村に委ねられています。
介護保険料は、65歳以上の介護保険料基準月額で表されることが多いです。
これは、65歳以上で所得区分「第4段階」のかたの保険料月額です。
「第4段階」というのは、、本人が市民税非課税で、かつ
世帯内に市民税課税者がいるかたです。
現在の箕面市の基準月額は、4000円です。
全国平均は4160円で、全国での最高額は、5770円、最低額は、2265円で、
約2.5倍の差がでています。
【箕面市の現在の介護保険料(65歳以上のかた)】
この月額4000円の箕面市の介護保険料基準月額を、来年度からどうするか?
今回公表している素案の概要版では、
現時点での暫定推計値として、
月額5050円から5200円という金額を公表しています。
現在の4000円と比較して、26パーセントから30パーセント増という値上げが必要だとの
推計になっています。
●介護保険料が決まる仕組み
なぜ、こんなに介護保険料が上がるのか?
詳しい説明は、素案の概要版を見ていただきたいのですが、
一番シンプルに説明するなら、
高齢者の増加→介護保険利用者の増加→介護保険支出の増加
→1人当たりの保険料上昇 ということになります。
しかし、この説明では荒っぽすぎるので、
もう少し補足説明を加えます。
(1) 利用者増による上昇
まず、介護保険利用者の増加状況です。
平成23年度(2011年度)の要介護認定者数は4674人ですが、
それが、平成26年度(2014年度)には5596人になると推計されます。
約20パーセントの増加です。
次に、要介護認定者数が増加すると、介護保険を利用する人が増えるわけですから、
当然、介護保険の支出が増加します。
平成21年度(2009年度)から 平成23年度(2011年度)までの3年間の
介護保険給付費(支出)金額は、約178億円です。
平成24年度(2012年度)から 平成26年度(2014年度)までの3年間の
介護保険給付費(支出)見込金額は、約225億円です。
金額ベースで、約26パーセントの増加見込みです。
(2)国の指針・制度変更による上昇
介護保険制度は、国において3年ごとに見直しがされます。
今回の介護保険制度の見直しにより、
65歳以上の介護保険料基準月額が増加する制度改正が複数ありました。
例えば、65歳以上のかた(「第1号被保険者」と言います)と
40歳以上65歳未満のかた(「第2号被保険者」と言います)とで、
介護保険料を負担する割合が異なり、この割合は、人数比率に基づき3年ごとに
見直しされています。
現在は、第1号被保険者20パーセント、第2号被保険者 30パーセントですが、
来年度からは、第1号被保険者21パーセント、第2号被保険者 29パーセントに変更され、
65歳以上のかたが介護保険料で負担すべき額が増加します。
他にも、所得段階区分の変更や、介護報酬地域区分の見直しで、
介護保険料が上昇する影響が生じています。
この(1)(2)の影響だけでも、65歳以上の介護保険料基準月額は、
約1000円上昇します。
(3)施設整備による上昇
介護保険では、介護が必要な状態になっても、できるだけ住み慣れた自宅で
過ごしていただくことを基本としています。
しかし、ご本人の状態や家族環境などにより、特別養護老人ホームなどの施設に
入所して介護を受けることを希望されるかたも、たくさんおられます。
介護保険施設としては、特別養護老人ホームのほかにも、老人保健施設や
グループホーム、特定施設などの種類があり、
目的や状態によって選択できる制度にはなっていますが、
一方で、特別養護老人ホームは満杯で、入所を待つ待機者が多くおられるのも
現実です。
箕面市の特別養護老人ホーム待機者は、平成23年(2011年)4月現在で、226人に
なっています。このうち、特に介護度が重く緊急度が高いかたは、115人です。
このように、新たな施設整備もニーズとして必要となっています。
そこで、まず、現在決定している計画が、「旧清掃工場跡地」を活用した
福祉複合施設の建設です。
これについては、今年3月3日のブログ「松寿荘と永寿園」をご覧ください。
この新しい複合施設の中に、定員29人の特別養護老人ホームが平成25年4月に
できる予定で、ここは「地域密着型」という箕面市民限定の入所施設です。
一方、この施設ができることで、施設を運営していく経費が当然必要ですので、
介護保険給付費は増加します。その影響を、65歳以上の介護保険料基準月額で
推計すると、月額約40円の増額となります。
さらに、他にも介護保険施設がほしいというニーズも強くあり、
新たな施設整備を行えば、それに伴い、保険料も増額となります。
新たに介護保険施設を建設した場合の介護保険料基準月額への影響額を、
施設種別ごとに表したのが下のグラフです。
どの施設をどの程度整備していくか、慎重に検討を進めています。
【施設整備による保険料基準月額の増加見込(例)】
このような試算の結果、現時点での介護保険料基準月額の暫定推計値が、
月額5050円から5200円という金額になっています。
5050円は、今後3年間、清掃工場跡地の福祉施設以外は介護保険の施設整備を
行わない場合。
5200円は、さらに小規模特別養護老人ホーム、グループホーム、特定施設の整備を
行った場合の推計値です。
●保険料上昇抑制策の模索
介護保険料の上昇を出来るだけ抑制したい。
そのために、「素案」では2つの方策を掲げています。
(1)市の介護給付費準備基金の取り崩し
介護保険制度が発足した平成12年度(2000年度)から、
箕面市は、介護保険用の貯金(基金)を持っています。
正式には「介護給付費準備基金」と言います。
これは、初期に国から交付された準備費用と、
3年ごとの介護保険財政の剰余金を積み上げたものです。
基金の目的は、赤字が出た場合に一時的に穴埋めする資金で、
急激な介護保険財政の悪化に備える「非常時の備蓄米」のようなものです。
箕面市の介護給付費準備基金は、現在の残高は約4億円です。
過去3年間の介護保険財政は、おおむね収支トントンの状態でしたので、
新たに基金に積むことはできない状況でした。
この基金をどこまで取り崩すか?
例えば1億円取り崩すと、介護保険料基準月額は、約90円下げることができます。
一方、全額を取り崩すと、次の3年間、貯金無しで乗り切らなければなりません。
もしも赤字が出た場合は、大阪府から借金をして穴埋めし、
その借金は、次の保険料に上積みされます。
保険料の水準と介護保険財政収支との両方をにらみながらの
シビアな見極めが必要です。
なお、都道府県でも、各市町村の介護保険財政が赤字になった時に、
一時的に貸し付けを行うために、「財政安定化基金」を設置しています。
今回、全国的に介護保険料の大幅な上昇が見込まれることから、
この基金を一定額取り崩して、保険料の上昇を押さえることが出来るようになりました。
大阪府の基金は、既に箕面市用として、約4800万円を取り崩すことが
決まりましたので、暫定推計値では、この基金取り崩しの効果額として
月額約45円の抑制を既に盛り込み済みです。
(2)所得階層・保険料率の設定変更
より所得の高い層の保険料率を上げたり、所得階層をさらに分割したりすることで、
基準月額の上昇を抑えることができます。
例えば、最も所得の高い層(65歳以上で、年間収入が約1300万円以上のかた)の
保険料率(現行1.8)を2にすることで、
介護保険料基準月額は、約27円下げることができます。
素案では、いくつかのパターンをシミュレーションしています。
このように、月額5050円から5200円という金額は、まだ決定ではありません。
あくまで現時点での暫定推計値です。
皆さまから寄せられたパブリックコメントのご意見も踏まえ、
さらに審議会・部会で検討を重ねるとともに、市議会に正式にご提案し、
来年3月に確定する予定です。
どこまで上昇を抑制出来るか。これからが、まさに検討の正念場です。
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