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SDGs と ラッピングトレイン ~ 「安全な水とトイレ」を世界中に

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皆さま、こんにちは。上下水道局長の小野啓輔です。

先日、阪急電車の新しいラッピング車
「SDGs トレイン 未来のゆめ・まち号」に遭遇しました。

これは、阪急阪神ホールディングスグループが取り組んでいる社会貢献活動
「ゆめ・まちプロジェクト」の10周年を記念して運行されているもので、
国連の「SDGs (エスディジーズ)=持続可能な開発目標」の啓発メッセージを発信する電車です。

                   【阪急電車】                            【阪神電車】  

 

先頭車両のデザインは、SDGs の目標をイメージする様々な人や生き物たちが、
よりよい地域・社会を願いながら、未来へ向かってパレードをしていく様子を描き、
SDGs を親しみやすく表現しています。



また、中間車両側面の各ドアの横には、SDGs の全体ロゴと、
貧困や差別の解消など 1 ~17 の目標のイラストが描かれています。

        

さらに、車内のすべての広告スペースを使い、SDGs が掲げる各目標の解説や、
SDGs に関連した同社グループ、国・府・協賛企業・市民団体などの
様々な取り組みに関するポスターを掲出しています。
車内の照明はLED電球が採用され、窓ガラスは二重構造で冷暖房の効率がよく、
環境にやさしいトレインとなっています。

阪急電鉄さんには、これまでにも、
手塚治虫や、わたせせいぞう、ベルばら、スヌーピーなどのラッピングトレインで
私たち乗客を楽しませていただいています。
明治の森箕面公園も、「宝夢トレイン」などで何度か取り上げてくださいました。
ラッピングトレインに遭遇すると、ちょっと得した気分になって、
なんか、いいことありそうな予感がしますね。
と同時に、SDGs が、日本の中に徐々に広がってきていることを身近に実感します。

今日のテーマは、前回に引き続き、「グローバル・ゴールズ SDGs 」です。
前回のブログでは、「世界を変える17の目標 ~ 持続可能な開発目標 SDGs」
基礎的な事柄をご紹介しました。

今回は、その17の目標(ゴール)のうち、上下水道局に最も身近な
「ゴール 6 安全な水とトイレを世界中に」 について考えてみたいと思います。



●ゴール 6 安全な水とトイレを世界中に

「ゴール 6 安全な水とトイレを世界中に」は、
すべての人が安全な水とトイレ(衛生施設)を利用できるようにすることが目標です。
国連採択文書の原文では、「すべての人々の水と衛生の利用可能性(アクセス)と
持続可能な管理を確保する」となっています。

私たちが生きていく上で、「水」と「トイレ」は、必要不可欠なものです。
世界中のどこであっても、飲み水はもちろんのこと、料理、食器洗い、手洗い、お風呂、
洗濯、トイレ、さらには出産や医療などにも、安心して使える水が手に入ることと、
安心してトイレを使えることはとても重要で、人が生きていく基本的な人権のひとつです。

日本では、ほとんどの場所で、水道をひねるとすぐに清潔で安全な水が手に入ります。
また、各家庭には個室のトイレがあり、多くの地域で水洗化されています。
さらには、世界トップクラスの技術で、トイレの節水や保温・臭いの管理ができ、
水洗、洗浄やふたの開閉まで自動化されているものもあります。
衛生環境が整った水とトイレは、日本では極めて「あたりまえ」の状態ですが、
このような環境が整っている国は、果たして世界にどれだけあるのでしょうか?

実は、日本のような水とトイレの環境が整えられた国や地域というのは、それほど多くありません。
世界の多くの場所で、多くの人々が、安全な水やトイレを利用できず、
過酷な生活を強いられて、健康を損ない、食料が不足し、教育や労働の機会を奪われ、
貧困の悪循環、連鎖が進むなど、多くの問題を生じています。

ユニセフ(国連児童基金)とWHO(世界保健機関)の共同報告によると、
世界の人口約 70 億人に対して
*21億人、つまり、10人に 3人が、安全な水を確保できていません。
*46億人、つまり、10人の 6人が、安全なトイレを利用できていません。
*毎年289,000人、つまり、1日 800人の子どもが、不衛生な水やトイレによる
  下痢性疾患で命を失っています。

健康、教育、暮らしを支えるうえで不可欠な「安全な水とトイレ」。
この人間にとって基本的な権利すらない状態で生活している人が何十億人もいるのです。
世界を取り巻く水とトイレの現実は、知れば知るほど過酷です。

その現状を改善し、「だれもが安全な水とトイレを利用できるようにし、
自分たちでずっと管理していけるようにしよう」というのが、目標 6 です。

         

それでは、世界の水とトイレの現状を、たくさんの情報から少し整理してみます。
今回は、まずは「水」から。

●「安全に管理された飲み水」を世界中に

2015年の時点で、世界の人口約 70 億人に対して、
21 億人が安全な水(「安全に管理された飲み水」)を確保できていません。
10 人に 3 人( 29 %)は、水問題に苦しみながら生活しています。

地球上には,たくさんの水があるように思えますが、そのほとんどが海水で、
私たちが生活用水として利用できる河川水や地下水は、
地球上の水の約 0.8 パーセントしかないと言われています。
それも自然の水循環システムがあってこその、限りある資源です。 

         【国土交通省 平成 30 年版 水資源の現況 から】

特に、雨がほとんど降らず、水がとても少なく、水源が乏しい地域もあります。
また、貧しい国では,上下水道設備などのインフラが整っていない地域も多いです。
特に、都市部から遠く離れた村や、都市部のスラム、
紛争や災害でインフラ設備が破壊された地域などでは、
水道などの給水サービスそのものが整備されない状況にあります。
さらには、水が出る蛇口や配水管などの水道施設はおろか、 水汲み用の井戸すらない地域や、
給水サービスがあっても、貧困層が利用できる金額設定でない地域もあります。

そのような地域では、どこかの川や池、水たまりなどから水を汲んでこなければいけません。
そこから汲んできた水を、そのまま飲み、料理や手洗いにも利用しています。
例えば、糞尿や生活排水で汚れた水、工場排水などが流れ込んだ水、
有害な物質が染み込こんだ土地の地下水など、
川や池、水たまりなどの水は多くの場合、病原菌や寄生虫が存在するなど、不衛生な水です。
しかし、それでも「どんなに汚くてもこの水を飲むしかない」のが現実です。
これらの水を、処理しないまま飲んで下痢になってしまい、
さらには、コレラ、赤痢、A型肝炎、腸チフスなど重篤な感染症を引き起こし、
ただ水を飲んだだけなのに、多くの命が奪われています。

●「水汲み」問題 ~水汲みが、子どもや女性の未来を奪う

また、安全に管理された飲み水が手に入らないことから起きる問題は、 衛生面だけではありません。

たとえ不衛生な水でも、それを確保するためには、
誰かが、川や池、水たまりなどへ水を汲みに行って運んでくることが必要です。
しかもそれは1日に1回の水汲みでは足りないことがほとんどで、
何度も往復することになり、その距離が遠いほど時間もかかります。

「水汲み」は、命をつなぐ大切な仕事ですが、
多くの国では、遠くまで何時間もかけて水を汲みに行くのは、主に子どもや女性たちです。
敷地内で水が得られない世帯の80パーセントが、
女性と女児が水汲みの責任を担っているというデーターもあります。
丸半日、この水汲みで時間を使う子どもたちもいます。

もちろん、不衛生な水のせいで病気になることもあります。
さらに、水汲みのため、重い水に耐えながら、毎日遠い道のりを歩き続け、
多くの時間とエネルギーを費やしているため、疲れ果てた子どもや女性には、
学校に通ったり働いたりする時間も体力も残されていません。

こうして、水汲みのために、学校に通えなかったり、収入を得る仕事に就けなかったり、
不衛生な水のために病気にかかり、治療費がかさんだり、
働けないために収入も得られず、さらに病気が悪化するといった 「病気と貧困の悪循環」が続きます。

安全な水が飲めないというのは、衛生面でも教育面でも、 就労面でも収入面でも重大な問題となり、
問題が複合し、なかなか貧困から抜け出すことができず、
やがては 次の世代にも受け継がれていく「貧困の連鎖」が起こっています。

        【基本的な給水サービスを利用できる人々の割合(2015年)】

           ユニセフ・WHO共同監査プログラム報告から

●安全な水を世界中に ~ 私たち日本の役割

他にも、人口増加に伴う水資源の不足や偏在に加えて、
地球温暖化や気候変動の進行などによる干ばつの多発や砂漠化、
淡水の枯渇などによる水不足問題も、クローズアップされてきています。

水不足による飢餓・栄養不良の悪化、さらには水資源をめぐる水紛争なども含めて、
水需給が逼迫している状態は、「水ストレス」と呼ばれることもあります。

経済協力開発機構(OECD)によると、人類が今のままのペースで水を使い続けると、
2050年には、深刻な水不足=「水ストレス」を抱える人口は、
世界の40パーセント以上となる可能性もあると予想されています。

「20世紀の戦争が石油を巡る争いであるなら、21世紀は水を巡る争いの世紀になる」
とさえ言われるほど、深刻な状況です。

これらはいずれも、現代の日本にいると、なかなか実感しにくい問題です。

実は日本もかつては、河川や井戸水などの汚れた飲み水を原因とする
コレラ・赤痢・チフスなどの大流行が何度か繰り返されて、
多くの人が命を落としていた時代が、長期間続いていました。
そのような「水系伝染病」を防ぐために、明治20年(1887年)の横浜水道を皮切りに、
近代水道が全国的に普及してきた歴史を持っています。
日本の水道も、もともと感染症対策として始まったものなのです。

                【国土交通省 日本の水資源 から】

また、特に第2次世界大戦以降の日本の復興、経済発展、インフラ整備には、
様々な国際社会からの支援によるところが大きかったことも 決して忘れてはならない事実です。

さらに、日本に輸入される大豆や小麦、牛肉などの農産物や工業製品の生産にも、 水が必要で、
日本は輸入によって、海外の水を間接的に大量に消費していることになります。
私たちの普通の生活のために、世界から水をかき集め、
想像以上に発展途上国の生活を破壊しているという指摘もあります。

世界の水不足を緩和するためには、森林や山地、湿原、河川、地下水、海など、
地球的な視点から、水関連の生態系を保護・回復し、健全な水循環を確保することが欠かせません。
現代社会の生活や社会活動は、自然が水循環で浄化できる範囲を
もはや超えてしまっているとも言われています。

日本の私たちも、水に関する様々な現実を知ることが大切です。
限られた資源としての水と水循環を大切にするとともに、
開発途上地域の安全な水の確保を支援するために、
かつての日本が受けたように、一層の国際協力が必要とされています。

SDGs をきっかけとして、あらためて、水の恵みの大切さや地球の水循環、
世界の水問題、国際協力などについて、 少しでも想いを巡らせていただけたら幸いです。

次回は、もうひとつの大問題、 「安全なトイレ」について、考えてみます。

 

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