皆様こんにちは。病院事業管理者(兼)市立病院事務局長事務取扱の稲野です。
早くも3月。東大寺二月堂のお水取りもはじまり、いよいよ春の到来です。やっとインフルエンザ警報も解除されました。しかし、10年ぶりの大流行となっている麻しん(はしか)は、まだまだ油断できない状況です。免疫がない(又は不十分な)かたは、ぜひワクチン接種を検討してください。(麻しんについて、詳しくはこちらをご覧ください。)
(リハビリテーションセンター前の水仙)
さて、今回は、去る2月16日に開催した市民医療講座「知っておきたい脂肪肝と胃腸炎のおはなし」について、ご紹介します。
○本当はこわい脂肪肝~放っておくとどうなるの?
初めに「本当はこわい脂肪肝~放っておくとどうなるの?」と題し、当院消化器内科医員の森下直紀医師が講演しました。森下医師は、「肝臓」は最も大きい臓器で、重さが1~1.5キログラムあることや、有害なものを分解・解毒し、栄養を加工・貯蔵し、胆汁をつくり、排泄する「化学工場」のような働きがあることを説明しました。
そして「脂肪肝」とは、通常は3~5パーセントの中性脂肪が30パーセント以上、肝臓に蓄積した「フォアグラ」の状態で、いまや健康診断受診者の3分の1が脂肪肝の状態にあるそうです。
脂肪肝の原因は、従来のお酒の飲み過ぎによる「アルコール性」のものと、お酒を飲まない人が肥満や糖尿病などの関係で発症する「非アルコール性」のものがあり、後者をNAFLD(ナッフルディー)と呼び、いま増加傾向にあるらしいです。NAFLDは肥満度(BMI)と大きく関わっており、BMI(体重÷身長÷身長)が30以上(身長が1.7メートルだと体重が88キログラム以上)の人の7割がNAFLDらしいです。
NAFLDは、肝機能が正常な脂肪肝(NAFLナッフル)と、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)やALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)という酵素が上昇した肝炎(NASHナッシュ)に分かれ、NASHを放置していると、5~10年後に約5~20パーセントの人が肝硬変になります。そして、5年後に、そのうち10パーセントの人が肝がんになるそうです。
肝臓は「沈黙の臓器」といわれるように、NAFLDの大半は無症状で、症状が出たときには手遅れということもあります。健康診断や人間ドックで血液検査や肝エコー検査を受けましょう。特に、BMIが30を超える人は生活習慣を見直し、7パーセントの減量をめざして、食事療法と運動療法に取り組みましょう。
最後に森下医師は、「肝機能障害や肝臓の繊維化と関係がある血小板の値が15万以下の場合は肝臓内科を受診してください。当院には、大阪府内では3つの大学病院にしかない「マイクロ波凝固療法」の装置があり、手術をせずに治せる場合もあります。次年度には肝臓の硬さがわかるエコー装置も導入予定です。ぜひ当院を受診ください」と結びました。
(講演する森下医師)
○感染症胃腸炎の予防と対策
次に、「感染症胃腸炎の予防と対策」と題し、当院消化器内科部長の由良 守医師が講演しました。初めに由良医師は、胃腸炎は「感染性胃腸炎」と「非感染性胃腸炎」に分けられ、前者は細菌やウィルスによるもので、後者は薬の副作用、免疫異常、全身の病気、ストレスなどが原因であると説明しました。
また、細菌には「常在菌」と「通過菌」があり、前者はその生物に常に存在しており、普段は悪さをしない。後者は普段はいないが体内で増えると病原菌となることがあるもの。常在菌は「自分を守ってくれる仲間」で、腸内細菌そう(腸内フローラ)は胃腸炎を予防し、皮膚の常在菌は皮膚を守るバリアとなるそうです。
胃腸炎を予防するには、胃腸炎の原因菌やウィルスを体内に入れないことが大切で、リスクのある食べ物をさけることや、適切な手洗い、腸内細菌そうを健康に保つことが重要です。「ノロウィルス感染症」は、ノロウィルスに汚染された二枚貝(主にカキ)などを食べることで感染するので、生ガキは食べず、中心部までよく加熱して食べましょう。
そのほかにも、感染性胃腸炎の原因として、生肉、特に鶏肉の汚染が原因となる「カンピロバクター」や、おにぎり、弁当、ケーキなど素手で扱う手作り食品が原因となる「黄色ブドウ球菌」、健康な人や動物の腸内に生息し、100度6時間の加熱にも耐える「ウェルシュ菌」などがあり、予防法としては、前日調理は避け、加熱調理したものを早く食べることと、やむを得ず保管するときは小分けにして、急速に冷却することだそうです。
また、予防の3原則として、調理した包丁やまな板を常に洗浄する「清潔」、細菌を増やさないために素早く「冷却」、細菌をやっつけるための「加熱」があり、「通過菌」を取り除くため、手洗いが大切です。しかし、洗いすぎると皮脂が少なくなり、エサが減って、皮膚の「常在菌」が少なくなり、乾燥してあかぎれができ、「通過菌」の黄色ブドウ球菌が増えて、感染症のリスクが高まることもあるらしいです。
最後に由良医師は、「胃腸炎になったら、水分を取ること。そして、下痢止めは飲まない。特に下痢止めは毒素を体内に残すことになるので、いくら下痢症状があっても、下痢止めは飲まないこと。嘔吐が続いて水分が取れないときや、血便が出ている、下痢の回数が2~3日経っても減らないときなどは、早めに病院へ行くことが大切です」と解説しました。
(講演する由良医師)
【面会禁止解除のお知らせ】
池田保健所管内に出ていた「インフルエンザ警報」が解除されましたので、去る3月2日(土曜日)に「面会禁止」を解除しました。長らくご迷惑をおかけしましたが、これからは自由に面会が可能です。しかし、かぜ症状等があるかたは、引き続きマスクの着用をお願いいたします。