こんにちは。健康福祉部長 小野啓輔です。
先日の台風18号で、京都、嵐山の渡月橋が水没している衝撃的な映像が、
テレビで流れました。
桂川・渡月橋周辺の中州一帯も浸水し、
中之島公園内にある料亭「錦」も、大きな被害を受けました。
この「錦」。知る人ぞ知る歴史と伝統ある老舗の名料亭ですが、
おかみさんと私が、なんと小学校の同級生なのです。
去年、同窓会で40年ぶりに再会し、
その後も親しい友人たちと何度か訪れました。
京都市によると、嵐山の全商店約200店、旅館約20軒のうち、
約1割が浸水などの被害を受け、営業休止や懸命の復旧作業を
続けておられるようですが、
被害が軽微だった店はすぐに営業を再開。
天龍寺など主な観光名所も深刻な被害は免れており、
今は、むしろ風評被害の影響を心配し、
全国から寄せられている「嵐山は大丈夫か」との問い合わせに対し、
「観光客を含め、けが人が誰もいなかったことは本当に幸い。
これからがいいシーズン。ぜひ嵐山を訪れて楽しんでほしい」と
PRしているそうです。
大都市近郊、川の流れ、もみじ、足湯、阪急電鉄など
観光地として共通点も多い、嵐山と箕面。
同級生の存在とも相まって、
この話は、私の中で一気に他人事ではなくなっています。
実際、箕面でも、台風18号により、幸いに人的被害はありませんでしたが、
箕面公園・滝道や止々呂美、船場などで、
倒木や落石、道の通行止めなど、かなりの被害がありました。
被害にあわれた方々に、心からお見舞い申し上げます。
今日のテーマは、自分に気合いを入れるため、
「社会保障制度改革」に挑戦します。
●社会保障制度改革国民会議の報告書
政府の「社会保障制度改革国民会議」が、8月6日に、
報告書を安倍首相に提出しました。
この国民会議は、自由民主党、公明党、民主党のいわゆる3党合意による
「社会保障と税の一体改革」の一環で平成24年8月に成立した
「社会保障制度改革推進法」に基づき内閣に設置され、
平成24年11月から平成25年8月にかけて、約10か月、20回にわたり
会議が行われてきました。
「社会保障と税の一体改革」については、以前にこのブログでもご紹介しましたが、
国民会議は、その後の政権交代も経ながら、なんとか法の期限内に
報告書をまとめ、道筋を示したことになります。
国民会議のホームページは、こちら。
報告書全文は、こちら。
内閣官房のホームページは、こちら。
「確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋」と副題が添えられたこの報告書。
例によって、全文53ページの大作で、
しかも図表など全くない、文字ばかりの論文です。
ただ、今回は、目次も概要版も、ちゃんとあります。
概要版は、こちら。
●国民へのメッセージ
国民会議の委員は、15人。
大学の先生が11人、研究所3人、マスコミ1人で、
いずれも社会保障関係の専門家です。
報告書の冒頭に、会長である清家篤 慶應義塾長の
「国民へのメッセージ」が掲載されています。
「日本はいま、世界に類を見ない人口の少子高齢化を経験しています。」
で始まるメッセージ。
そこでは、
日本が人類の夢であった長寿社会を実現したのは、
社会保障制度の充実のおかげであること、
このすばらしい社会保障制度を必ず将来世代に伝えていかなければならないこと、
社会保障制度の持続可能性を高め、その機能をさらに発揮するためには、財源として
社会保険料、消費税の確保、能力に応じた負担の仕組みの整備が必要なこと、
社会保障を必要としている人にしっかりと給付されるような改革が必要なこと、
現役世代、若い世代の活力を高め、納得性の高い社会保障制度のもとで、国民が
それぞれの時点でニーズに合った給付を受けられるようにしていくことが大切であること
などが、説明されています。
メッセージの結びに、清家会長は、福沢諭吉の「学者は国の奴雁(どかん)なり」
という言葉を引用しておられます。奴雁(どかん)とは、雁の群れが一心にえさを
食べている時に、一羽だけ首を高く掲げて遠くを見渡して、人や獣の接近などを
見張り、難に備える雁のことだそうです。
諭吉は、学者もまた、現状を冷静に分析し、将来にとって何が良いかを考える役割
を担うということを説いています。
そして、清家会長は、
「社会保障の専門家として、社会保障制度の将来のために何が良いかを、論理的、
実証的に論議してまいりました。この報告書は、日本を世界一の長寿国にした世界に
冠たる社会保障制度を、将来の世代にしっかりと伝えるために、現在の世代は
どのような努力をしたらよいのか、ということを考え抜いた私たち国民会議の結論で
あります。」という力強い言葉で締めくくっておられます。
この問題の重要性と責任の重さが強く表れた、異例の、特色あるメッセージだと
思います。
【市立介護老人保健施設 敬老のつどい ライフプラザ】
●第1部 総論
第1部「総論」では、社会保障制度改革の全体像が示されています。
基本的な考え方としては、
自助、共助、公助の最適な組合せ、社会保障機能の充実と給付の
重点化・効率化、税と社会保険料の役割分担、給付と負担の両面にわたる
世代間の公平など、社会保障制度改革推進法の考え方を踏まえています。
そして、現在の社会保障を「1970年代モデル」とし、
その前提となっていた社会経済構造の大きな変化に対応し、
新しい社会保障のモデルとして
「21世紀型(2025年)日本モデル」への転換・再構築をめざす
という方向性を示しています。
この社会保障の「21世紀型(2025年)日本モデル」。
なかなか具体的にイメージすることは難しいのですが、
報告書からポイントとなるキーワードを引用してみます。
*専ら年金、医療、介護を中心とした「1970年代モデル」から、
年金、医療、介護の前提となる、現役世代の「雇用」や「子育て支援」、
さらには「低所得者・格差の問題」や「住まい」の問題なども視野に
入れる社会保障へ。
*高齢者世代を主な給付対象とする社会保障から、
切れ目なく全世代を対象とする社会保障へ、
*すべての世代が、その能力に応じて相互に支え合う全世代型の社会保障へ
*その実現のためには、国と地方が協働し、地域の特性に応じて、医療・介護・
福祉・子育て支援を含めた支え合いの仕組みをハード面・ソフト面における
まちづくり・新しいコミュニティの再生を推進し、成熟社会の構築に向け
チャレンジしていくことが必要
*社会保障給付費は、2010(平成22)年度に103兆円4,879億円に達し、
初めて100兆円を突破。高齢化の進展に伴い今後も伸び続けることは確実で、
国民の負担の増大は不可避。
*財源の負担に当たっては、世代間の公平だけでなく、世代内の公平も重要であり、
特に他の年代と比較して格差の大きい高齢者については、一律横並びに
対応するのではなく、負担能力に応じて社会保障財源に貢献してもらうことが必要
なお、改革の実施時期については、
消費税の増税という国民負担を、社会保障制度改革の実施という形で速やかに
国民に還元する「短期」と、
団塊の世代がすべて75歳以上となる2025(平成37)年までに実施する「中長期」
の2段階で進める考え方を示しています。
●第2部 各論
次に、報告書では各論として、
「少子化対策」「医療」「介護」「年金」の社会保障4分野について、
それぞれ改革の具体的方策を示しています。
すべてを網羅することはできませんが、
ここでは主なものを見ておきます。
(1)少子化対策分野
*子どもたちへの支援は、社会保障制度改革の基本
*幼児教育・保育の量的拡大や質の向上、地域の子ども・子育て支援の充実
*子ども・子育て支援新制度とワーク・ライフ・バランスを車の両輪として推進
*子どもの貧困、ひとり親家庭の貧困を看過せず、一層の取組
*認定こども園の普及推進、小規模保育・家庭的保育など、
地域実態に即し柔軟に対応
*妊娠期から子育てを総合的に支援するワンストップ拠点の設置・活用を検討
*育児休業期間中の経済的支援強化を検討
(2)医療分野
*「病院完結型」から「地域完結型」医療に移行
*皆保険制度とフリーアクセスを守るためにも、医療改革を推進
*病床機能報告制度を早期導入し、都道府県は地域医療ビジョンを、次期医療計画の
策定時期である2018(平成30)年度を待たず、速やかに策定し、直ちに実行
*国民健康保険は、財政的構造問題の解決を前提に、次期医療計画策定前に
保険者を市町村から都道府県に移行
*被用者保険の後期高齢者支援金の算定で、総報酬割を2015(平成27)年度から
全面導入し、生じた財源は国民健康保険の財政構造問題の解決などに有効活用
*国民健康保険料の賦課限度額を引き上げ、低所得者の保険料軽減措置を拡充
*被用者保険の標準報酬月額の上限額引き上げを検討
*後期高齢者医療制度は、現行制度を基本に必要な改善を実施
*紹介状のない患者の大病院外来受診に、定額自己負担を求める仕組みを検討
*70歳〜74歳の医療費自己負担は、新たに70歳になった高齢者から、
法上の2割負担を早期に導入
*高額療養費は、能力に応じた負担となるよう所得区分を細分化
*難病対策を総合的・一体的に改革
(3)介護分野
*介護保険の高所得者の利用者負担を引き上げ
*食費や居住費についての補足給付支給は、資産を勘案
*特別養護老人ホームは、中重度者に重点化、デイサービスは、重度化予防に重点化
*低所得者の介護保険料の軽減措置を拡充
*介護納付金は、総報酬額に応じたものとすべきだが、後期高齢者支援金の状況も
踏まえつつ検討
*介護予防給付費は、市町村の地域包括推進事業(仮称)に段階的に移行
*医療の見直しと介護の見直しを一体的に行い、地域包括ケアシステムづくりを推進
(4)年金分野
*改革は2段階アプローチとし、所得比例年金といった将来の制度体系は、
引き続き議論
*被用者保険の適用を拡大、多段階免除の積極的活用など、制度保障の網を充実
*デフレ状況下でのマクロ経済スライド発動を検討
*支給開始年齢引き上げの是非は、中長期的な課題とし、検討作業は速やかな
開始が必要
*年金課税強化など、高所得者の年金給付を見直し
*経済成長や雇用拡大、人口減少の緩和こそが重要
【西小地区福祉会 敬老のつどい 市民会館グリーンホール】
●具体化は、今後の国会論議で
この報告書を受けて、政府は8月21日に、
今後の社会保障制度改革の方向性や道筋などを盛り込んだ
「社会保障制度改革推進法第4条の規定に基づく「法制上の措置」の骨子について」
を閣議決定しました。
10月にも開催が想定される次期臨時国会で、この骨子がプログラム法案として
提出される見通しです。
なお、各個別分野の改革は、厚生労働省の社会保障審議会などで議論され、
より具体的な制度設計と法案化が進められていきます。
2014(平成26)年 通常国会:介護保険制度改革関連法案
2015(平成27)年 通常国会:国民健康保険などの医療保険制度改革関連法案
2017(平成29)年度まで:地域医療ビジョンの策定など、医療制度改革を順次実施
基本的に、国民会議の報告書をベースに、具体化が進んでいくと思われますが、
例えば、要支援者への予防給付について、マスコミが一時期、介護保険適用から外すと
報道したものを、厚生労働省が、あくまで介護保険制度内で再構築すると強調したり、
3党合意で進んでいた民主党が、国民会議の報告書に反発し、
今後、実務者協議に応じない方針を決めたりするなど、
実現に向けては、まだまだ紆余曲折が予想されます。
消費税の増税をはじめ、介護保険制度の見直し、国民健康保険の広域化、
医療制度の改革など、私たち市町村にも大きく影響する社会保障制度改革です。
今後の、社会保障審議会や国会での論議に、十分注目していく必要があります。
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