皆様、こんにちは。子ども未来創造局の大橋です。
蒸し暑い日々が続きますが、皆さまにはいかがお過ごしでしょうか?
今年は5月28日、例年よりかなり早く梅雨入りしましたが、どうも梅雨明けはいつも通りの7月20日前後のようです。
例年、梅雨の間に近畿地方で降る雨の量は140ミリ前後らしいのですが、今年は5月28日から6月27日までの1か月間で、既に270ミリを超える雨が降ったそうです。
そして、1日に50ミリ以上の雨が降った日が、大阪で3日もあったそうです。
秋田県由利本荘市への視察を前にして、思わずベランダに「てるてる坊主」をぶら下げました。
ところで、「てるてる坊主」の起源を、皆さんはご存知でしょうか?
てるてる坊主は、中国の「掃晴娘(サオ・チン・ニャン)」という人形が起源だそうです。
この人形は、赤い服を着た女の子で、稲穂で作った“ほうき”を手に持っています。この“ほうき”で雨雲を掃き、晴れを呼び寄せるのだそうです。
日本には、江戸時代に伝わったなど諸説ありますが、雨が続くと、白い布で口や目を入れずに作り、軒先にぶら下げ、願いがかなった時に口や目など顔を書き入れ、お酒と一緒に川に流すのが風習となりました。
また、逆さまにぶら下げたり、黒い布で作りぶら下げると、雨乞いとなるそうです。
早く梅雨が明け、カラッとした夏空が待ち遠しいですが、今年は、梅雨の後半、長雨の可能性もあるとか?皆様におかれましては、大雨など十分お気を付けください。
さて、秋田県は由利本荘市へ6月27日・28日と視察に行ってきました。
そのご報告等をさせていただきます。
○秋田県教育現場視察費用補正予算(案)6月議会で可決・決定
箕面市では、全国学力学習状況調査で5回連続「平均正答率全国1位」を誇る秋田県の教育現場を一人でも多くの教職員に見て、肌で感じてもらい、箕面の教育が如何にあるべきかを考え、実践に移してもらうことを目的に、この6月議会に150人分の視察費用の補正予算をお願いしました。
議会では、なぜ秋田県なのか、なぜ由利本荘市なのか、学力が全国トップだからではないのか、そんなに多くの教職員が視察する必要があるのか、視察が目的になっているのではないか、視察後の取り組みが大切だ、などなど様々な角度から議論が交わされ、ご指摘、ご提言をいただくとともに、補正予算を可決・ご決定いただきました。
今回の視察は、6月27日から総勢140名(うち、教職員119名)の4班編成で行います。
改めて視察をしただけに終わらせてはならない、教育委員も事務局も学校現場も一丸となって、箕面の子どもたちのためによりよい教育の取り組みにつなげる必要であると思いを強くし、今は身の引き締まる思いでいっぱいです。
○なぜ、秋田県由利本荘市?
秋田県は、昭和30年代は全国学力テストで40位台を低迷していました。「こうした状況を何とかしなくては」と、秋田県教委、市町村教委、学校現場が一丸となって教育改革のための努力が始まったそうです。そして、約40年が経った今、学力だけでなく、体力においても常にトップクラスとなった秋田県。
今回の視察先である由利本荘市の佐々田教育長は、以前県教委におられ、正に秋田県の教育改革を進めてこられたかたです。また、教育長に就任されてからも県教委とタイアップして様々な取り組みを実践してこられました。特に、文部科学省が教育改革をめざし、全国11か所で取り組んだ「熟議」の開催市にも選ばれ、先進的な取り組みを率先して取り入れてこられました。(「熟議」については、この報告の中でご説明します。)
今も佐々田教育長は、暇さえあれば学校へ赴き、子どもたちの様子、授業の様子を見て回られています。また、教育委員会の猪股委員長をはじめ、教育委員のみなさんも、すべての小・中学校の授業参観を行い、学校現場との意見交換を頻繁に行うなどされています。
まさに、教育委員会、事務局、学校現場が有機的・実体的に結び付き、組織的に学校教育が進められています。
○第1陣が由利本荘市を視察
私は、教育委員会の丹澤委員とともに第1班。6月27日・28日に視察してきました。
1班36名、朝8時に伊丹空港に集合し、いざ秋田へ!
秋田空港からバスに乗り換え、お昼過ぎ由利本荘市立新山小学校に到着。
待ち構えていたのは、ABS秋田放送局と秋田さきがけ新聞の方々。
27日夕方のニュース番組「every.」で視察の様子が放送され、28日の秋田さきがけ新聞朝刊でも大きく取り上げられました。
○新山小学校の授業参観
新山小学校では、到着後休憩する間もなく、早速、同校の桜井校長先生から学校経営の説明があり、続いて研究主任の先生から授業研究の説明がありました。
新山小学校では、「確かな力が育つ学びの創造 〜自ら思考し続ける子どもの育成〜」を研究主題・副題とされておられ、どの学年、どの教科、どの先生でも、1時間の授業を「めあて(課題)の提示 ― 自己学習(一人で考える) ― 集団学習(学び合い) ― まとめ―振り返り」の順序で授業が進められるとのことでした。
また、子どもたちにも授業でのルール(授業規律)を示しています。例えば、授業の始まりと終わりのあいさつや、授業中の手の上げ方、意見の発表の仕方、ノートの書き方などなどです。
これらのルールは子どもの成長段階に応じて示されており、小学1年生からの積み重ねが必要であり、学年がかわっても一貫していることが大切だとの説明でした。
いよいよ、授業参観です。この日、参観する授業は、2年生の算数「水のかさをはかろう 知らせよう」と、6年生の算数「割合の表し方を考えよう」です。
参観させていただく教室への移動中、まず驚いたのは子どもたちの笑顔と爽やかなあいさつです。こちらからあいさつするまでもなく、どの子どもからも大きな声で「こんにちは!」とあいさつしてくれます。
私は、6年生の授業を拝見させていただきました。
教室に入ると、先生と子どもたちが互いに大きな声で「よろしくお願いします」のあいさつで授業が始まりました。上の写真をご覧ください、どの子どもも笑顔で先生に集中しているのです。
私の隣にいらした校長先生に、「いつも、こうなのですか?」と、少しいじわる気に質問すると、
校長先生から「視察があるからといって、何も特別なことはしていません。いつも通りです」との答えが返ってきました。
私はまだ信じられず、「これだけの視察受け入れには、先生がたから反対されたのではないですか?」とお伺いすると、
「いえ、授業を見ていただくことで教員の授業力が付きます。反対などありません。どうぞ自由に授業をご覧ください。」と返ってきました。参った!
(授業参観する丹澤委員とテレビ取材クルー)
先ほど、研究主任の先生から事前にお伺いしていた通りの授業スタイルで授業が進んでいきます。子どもたちも手の上げ方、意見の発表の仕方などルールに従って学習に取り組んでいます。
授業は、先生が教え込むだけの授業ではなく、絶えず子どもたちが考え、自分の意見を発言し、決して先生はもとより、子どもも意見の違いや間違った答えを否定することなく、互いを認め合い、尊重しながら進められていました。
授業終了後、佐々田教育長さんにご質問させていただいた内容を少しご紹介します。
(大 橋)「今日、授業していただいた先生は、ピカイチの先生ですね!
でも、これだけの力量を持った先生なら、
学校が示す授業スタイルに抵抗感がおありじゃないですか?」
(教育長)「優秀な先生ですよ。ですが、授業スタイルは新山小の
スタイルに従っておられます。実は、2年前にライバル校から
新山に異動されてこられたときは、戸惑ったようです。
基本的にどの学校も基本的なスタイルは同じなのですが、
少しずつ学校によって特色があって、勉強もされたようですよ」
(大 橋)「授業規律を子どもたちに守らせることについては、
怖いものを感じるとか、子どもの意思を無視したことになる
可能性があるなどの意見を言われますが。」
(教育長)「子どもの意思を無視し、上から命令するならば
そうかもしれません。そうではなく、限られた授業の時間の中で、
自分勝手にしていたらどうなるのか、
子どもにも考えてもらわなければなりません。自分勝手が、
他のすべての子どもが考え、発言する機会を奪うことになる
ことを、子ども自身が考え、教員は範を示し教えなければ
なりません。当然授業中のルールが生まれるのです。
公教育として、どの子どもも平等に教育を受ける機会を
提供するためには当然必要なことです。」
(由利本荘市の佐々田教育長さん)
佐々田教育長のお話を伺い、改めて納得させられました。確かに、子どもたちだけの集団の中にも、自然とルールが形づくられます。当然のことながら、学級という集団で学習し、生活を行う上で、必ず最低限のルールは必要なのです。
授業参観の後、新山小の先生方への質問タイム。箕面の先生からは積極的で前向きな質問が出されていたところを見ると、何かを感じられたのでしょう。
私は、こっそりとその場を抜け出し、先ほど6年生の授業をされた先生の所に。
佐々田教育長と同じ質問をしてみました。この先生からも、
「授業スタイルは、研究主任を中心に練られたもので、学校組織として取り組まなければならないものです。転勤してきたときは戸惑いもありました。でも、子どもたちが進級しても同じ授業スタイルであれば戸惑うことがありませんものね」
でした。これにも、またまた参った!
子どもたちにとって何が必要か、どんな取り組みをしなければならないか、を先生自身が、学校という組織のルールに従って、子どもを中心に据えて取り組んでおられることがよく伝わってきました。
正直、懐疑的に秋田視察を参加した私でしたが、新山小の授業参観で衝撃を受け、その思いも一挙に払拭されました。
○「熟議」を開催
新山小学校から宿泊するホテルに移動し、少しの休息の後、夕方18時からホテル内の会議室で「熟議」が開催されました。
「熟議」とは、老若男女を問わず、様々な考えを持つ者が一堂に会し、ワークショップ形式により、与えられたテーマに沿って議論し、一定の結論を導き出すものです。
由利本荘市では、教育委員、事務局職員、学校の教職員、PTAのかたがたなど参加のもと、その時々のテーマを設定し行っているそうです。
また、この「熟議」、視察に来られたかたがたとも、よく実施しているそうです。
佐々田教育長曰く、
「視察に来られたかたがたに、いろいろ教えていただけます。今日は箕面市の進んだ取り組みを教えていただきます。」
なんと、謙虚ではあるけれど、良い意味で貪欲なことか。
「熟議」は、箕面第二中学校の橋本教頭による二中の取り組みの報告で始まりました。
報告の後、橋本教頭が「集団づくり」をテーマ設定され、由利本荘市・箕面市の教職員や事務局職員、そして両市の教育委員が班に分かれて議論を始め、その結果を発表しました。
立場や置かれた環境の違う者が、気兼ねなく意見を述べ合い、互いに認め合い、相互理解につながる良い取り組みで、由利本荘市と箕面市の違いが垣間見られ、楽しくもあり、とても参考になりました。
○二日目 各グループにわかれて学校視察
第2日目は、6つのグループに分かれて、由利本荘市内の小・中学校の視察を行いました。早いグループは、朝食もそこそこ6時30分にホテルを出発。子どもたちの登校風景からの視察です。
私は、尾崎小学校にお伺いしました。
ここでも、ビックリ!登校してくる子どもたちから「おはようございます」の大きな声。
しかも、玄関前に多くの子どもたちが立っているではありませんか。箕面でも見る光景かも知れませんが、この取り組みは尾崎小6年生自らの考えで始まったそうです。
会議室に通された後、校長先生、教頭先生、教務主任の先生、研究主任の先生が学校経営の説明とともに、授業スタイルについての説明をしてくださいました。
説明の後、校長先生から「何も特別なことはしていませんが、自由に見て回ってください」とのお言葉。やはり、ここでも同じ。普段通りの授業を見てくださいとのことでした。
(2年生 国語の授業風景) (3年生 算数の授業)
(6年生 総合学習 美しい日本の伝統にチャレンジしよう 茶道)
昨日の新山小と少し異なる部分もありますが、やはり基本は同じ。授業スタイルや授業規律は学校全体で組織的に取り組まれていました。
昨年度、由利本荘市を視察されたかたからの報告で、中学生が取り組んでいる「自問清掃」が報告されていましたが、ここ尾崎小学校で実際に拝見することができました。
「自問清掃」とは、掃除の時間は互いにしゃべることなく、「自分にできることは何か」、「自分が何をすべきか」など子ども自身が考えながら掃除に取り組む清掃活動のことです。
報告を聞いたときは、信じがたく奇異にすら感じていましたが、実際に見ると納得させられました。
低学年は、おしゃべりをしていたものの、自分ができることは何かを考えている様子が伝わってきました。そして、学年が上がるにつれ、先生から言われるまでもなく、黙って、自分にできる掃除を考え、掃除すべき場所を見つけて掃除をしていました。また、先生がたも一緒に掃除をしておられました。
掃除が終わると、清掃活動で良かった点、頑張って点、反省すべき点をお互いに言い合い、最後には、みんなで「お疲れ様でした」で掃除の時間が終了します。この風景は、低学年も高学年も同じ。見ている私も、清々しい気持ちになりました。
一緒に掃除されていた先生にお伺いすると、「低学年からの積み重ねで、当たり前になっています。高学年が手本になっていますよ」とのことでした。(疑ってかかり、申し訳ありませんでした。反省。)
これで、全日程を終了。
お伝えできていないことが、まだまだあるのですが、今後、丹澤委員さん以外の教育委員さんや教育長も視察されます。その報告がブログなどでもされると思いますので、そちらも参考にしてください。
○視察を終えて、今思うこと
倉田市政2期目、「教育改革」を掲げられていますが、私は決して学力全国トップにするための教育改革を求めておられるとは思いません。
一人ひとりの子どもたちの成長に寄り添い、公教育として教育を受ける機会の保障とともに、子どもたち誰もが学校生活を有意義に送ることができるよう、そして夢と希望を持ち、「生きていく力」が育まれるよう、教職員はもちろんのこと、学校という組織が、また教育委員会事務局が同じ方向に向かって進むための仕組みづくり、そうした教育改革が求められているのではないでしょうか。
その結果として、箕面市の子どもたちの学力や体力が向上し、全国でもトップクラスとなれば、それに越したことはないでしょう。
ですが、全国学力・学習状況調査や体力・運動能力、運動習慣状況調査の調査結果について、全国や秋田県との比較は、あくまで比較であり、その結果だけが大切なことではありません。子ども一人ひとり、「個」を大切にした教育の取り組み、その教育活動の過程が大切だと思います。
秋田県由利本荘市の取り組みは、ほんとうに素晴らしいと思います。そして箕面市の教育にも素晴らしいところがたくさんあると思います。
視察を無駄にすることのないよう、由利本荘市の取り組みの良いところを取り入れ、自らの良いところをさらに伸ばす取り組みを進めます。
変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気を持ち、変えることのできないものについては、それを受けいれるだけの冷静さを持ち、そして、変えるべきことと、変えてはいけないことを、識別するための議論を教育委員会はもとより、学校現場、先生がたとも重ね、教育委員会、事務局、学校が一丸となって、組織的に教育改革に取り組んでいかなければと心新たにした次第です。
箕面市では、5月から8月まで、「オレンジゆずるバスで行こう!日曜・祝日はお買い物バスとして運行」統一キャンペーンを実施中です。