皆さま、こんにちは、上下水道局長の小野啓輔です。
先月、還暦の誕生日を迎え、何人かの友人がお祝いをしてくれました。
中には、赤い靴下や赤いパンツをプレゼントしてくださった人も。
ポジティヴでハッピーな贈り物。
結婚式では「サムシングブルー」でしたが、還暦は「サムシングレッド」なんですね。
定年退職まで、あと1か月と10日ほどです。
部長ブログの私の登板も、今回を入れて、あと2回。
もちろん仕事全般、最後まで気を抜かずに、しっかりと日々の歩みを進めていきます。
今日のテーマは、「水道施設の耐震化」です。
以前から、一度きっちりとまとめてみたかったテーマです。
●水道施設の耐震化
水道は、市民生活や社会経済活動に欠かせない重要なライフラインです。
地震や台風など大規模な災害が起こった場合に、水道施設や水道管が被害を受けると、多くの世帯で断水が発生するなど、社会への大きな打撃となってしまいます。
そのため、地震が起きても被害を受けにくい水道施設や水道管への補強・更新を進め、地震による断水人口・区域等の低減や応急復旧期間の短縮など、被害をできるだけ抑制し、影響を最小化することが重要です。
安全・安心な水道水を安定的に供給し続けるため、箕面市では、地震に強い水道をめざして、水道施設の計画的な耐震化に取り組んでいます。
●基本的な水道水の流れ
水道施設の耐震化を考えるにあたって、まずは、箕面市内の水道水の基本的な流れ方を見ておきます。
箕面市内の水道は、大原則として、次の3種類の流れ方をしています。
(1)大阪広域水道企業団(以下、「企業団」)の浄水場からの水道水
「企業団浄水場」→「分岐」→「受水池」→「配水池」→「各ご家庭」
(2)箕面浄水場からの水道水
「箕面浄水場」→「配水池」→「各ご家庭」
(3)桜ヶ丘浄水場からの水道水
「桜ヶ丘浄水場」→「配水池」→「各ご家庭」
箕面市の水道水は、全体の87.1パーセントが、企業団から浄水を送ってもらって各ご家庭に配水しています。
これが、(1)の水の流れです。
もっと上流までさかのぼると、企業団は、琵琶湖から淀川に流れてきた水を、枚方市にある「村野浄水場」と、摂津市にある「三島浄水場」できれいに浄水してから、箕面市に送ってきます。
この企業団からの浄水が箕面市内に入ってくる入り口を「分岐」と言い、箕面市には6か所あります。
具体的には、桜ヶ丘分岐、芝分岐、西宿分岐、新家分岐、川合分岐、そして豊能町にある余野分岐の6か所です。
また、全体の12.9パーセントは、箕面市が自ら箕面川と半町や桜ヶ丘の井戸から取水し、箕面市内の浄水場で浄水し、各ご家庭に配水しています。
これが、(2)と(3)の水の流れです。
なお、(2)の箕面浄水場からの水道水は、すべて企業団からの水道水と配水池でブレンドしてから、各ご家庭に配水しています。
●企業団と箕面市の役割区分
箕面市は、企業団から浄水を購入しており、企業団は、分岐まで責任を持って浄水を供給します。
なので、(1)の「企業団浄水場」→「分岐」までは、企業団にきっちりと耐震化を進めていただく必要があります。
実際、平成30(2018)年6月の大阪府北部地震では、企業団の水道管(送水管)が高槻市内で破損し、箕面市では、新家分岐、川合分岐、余野分岐からの水が止まりました。
分岐で水が止まると、分岐から下流の水がすべて止まってしまうため、影響は極めて大きいです。
1つの分岐当たり、断水影響世帯は、数千~2万世帯に及びます。
大阪府北部地震のときの状況は、過去のブログ「大阪府北部地震による断水」をご覧ください。
企業団では、大阪府北部地震の被害も踏まえて、「大阪広域水道企業団経営戦略2020~2029」を現在策定中です。
そこでは、浄水施設・送水施設の更新・耐震化を大きく位置づけ、災害に強く、安全で良質な水を継続して供給できる施設整備を推進していく内容となっています。
箕面市に関連する事項では、例えば、「村野浄水場」や「小野原ポンプ場浄水池」の耐震化、三島浄水場からのルート上にある「千里浄水池」の耐震化、「千里幹線」の二重化、管路の更新・耐震化などが計画されています。
詳しくは、企業団のホームページ(会議資料)をご覧ください。
一方、分岐以降、受水池、配水池から各ご家庭までは、箕面市が責任を持って水道水を配水します。
また、箕面市の箕面浄水場と桜ヶ丘浄水場で浄水した水道水も、箕面市が責任を持って各ご家庭に配水します。
なので、(1)の「分岐」→「受水池」→「配水池」→「各家庭」と、(2)および(3)が、箕面市が所管し、耐震化を進めていくべき水道施設の範囲となります。
なお(1)のうち、半町と瀬川の一部地域では、「配水池」を通らず、企業団水を分岐から直接配水している所もあります。
●耐震化の推進状況
<1>「水道基幹施設」の耐震化状況
水道において、「浄水施設」「受水池」「配水池」などを、「基幹施設」と言います。
「基幹施設」は、お客さまに安定して水道水をお届けするための根幹となる重要な施設で、普段はもちろん、地震等の災害時においても、断水区域の縮小や応急給水などで大切な役割を果たします。
そのため「基幹施設」は、大規模地震に備え、優先的・計画的に耐震化を進めています。
なお、「受水池」「配水池」と言っても、池がぽつんとあるわけではありません。
水道水ですので、もちろん野天の池ではなく、水を貯める大きな水槽タンクです。
コンクリート等に囲まれ、雨水やごみ等が入らないよう密閉され、清潔が保たれた水槽空間が、地下や地上タンクに確保されており、その中に水道水があります。
また、池のほかにも、流量計やポンプ設備・受電設備、管理棟なども必要で、受水池のある場所を「受水場」、配水池のある場所を「配水地」と言います。
箕面市の場合、水道基幹施設の中でも、受水池・配水池は、極めて重要です。
もう一度、箕面市の水道水の流れの全体像を見てみます。
(1)「分岐」→「受水池」→「配水池」→「各ご家庭」
(2)「箕面浄水場」→「配水池」→「各ご家庭」
(3)「桜ヶ丘浄水場」→「配水池」→「各ご家庭」
よく見ると、水道水はどのパターンでも結局、「受水池」と「配水池」で一旦プールして、各ご家庭に送られています。
もしも「受水池」や「配水池」が地震により損壊したら、そこから下流へは水が送れなくなり、広域断水などの甚大な影響・被害が生じてしまいます。
このうち、特に(1)のパターンが、箕面市の水道水全体の87.1パーセントを占めていますので、「受水場」と、そこからさらに水が送られる「配水地」が受け持つ機能は、極めて大きく重要です。
箕面市内には、6か所の「受水場」があります。
そのうち、「坊島受水場」「新家南受水場」「新家北受水場」「川合受水場」「止々呂美受水場」については、耐震化が完了しています。
総有効容量14,550立方メートルのうち、12,900立方メートル、つまり88.7パーセントが耐震化済みです。
残るのは、「船場東受水場(1,650立方メートル)」のみですが、船場東受水場は、企業団の千里浄水池内に現在整備を進めている共同ポンプ施設への機能移行と配水区域の再編によって、今後廃止できる予定です。
【坊島受水場】 【川合受水場】
次に「配水地」ですが、水道水は季節や天候、昼夜などの時間帯、ご家庭の生活リズムなどによって、使用量が大きく変化します。
配水池は、各ご家庭の様々な水の使い方=水の需要量に応じて、水道水を決して途切れることなく安定的に供給するために、一旦貯めておく施設です。
また、配水池は基本的に数時間から12時間程度は水を供給できる容量の水道水を貯めていますので、もしも上流で事故や渇水等が生じても、各ご家庭が直ちに断水することがないよう対応できます。
さらに、災害時にも配水池自体が無事ならば、一定時間は水の供給を継続できますし、応急給水の拠点としても活用できます。
【小野原配水地】 【彩都中区配水地】
箕面市内には、耐震化の対象となる配水池が、12施設にわたって全部で 22池あります。
平成30(2018)年度末時点での配水池の耐震化の状況は、次の表のとおりです。
なお、大阪府内には、企業団や大阪市のような大規模事業体もありますので、大阪府内計と、大阪府総計を併記しておきます。
箕面市では、令和元(2019)年度に「箕面中区配水池」の耐震化も完了し、さらに令和2年度の水道事業会計予算として、「新稲低区配水池」の耐震化工事予算を市議会に提案しています。
この工事が完成すれば、箕面市の配水池の耐震化率は、約90パーセントに達する見込みです。
【配水池の耐震化工事】
さらに、「浄水場」の耐震化については、次の表のとおりです。
箕面浄水場は耐震化済みで、桜ヶ丘浄水場は、万が一地震で損傷しても、他の配水地からバックアップが可能となっています。
なお、これら耐震化の状況は、毎年全国で実施される「水道統計」で集計・公表されます。
水道統計では、水道施設の耐震化は、基準に基づき「L2対応(地震動レベル2)」を想定しています。
地震動レベル2とは、その構造物が過去、将来にわたって受ける可能性のある最強と考えられる地震動、つまり、想定しうる範囲で最大規模の地震を指します。
この地震動に対して、構造物が倒壊したり、外壁が脱落したりして人命を奪うような被害を生じない安全な構造で、その機能が保持され、水道水の供給に支障を与えないよう、耐震化を進めています。
【箕面浄水場】 【桜ヶ丘浄水場】
<2>「水道管」の耐震化状況
水道管については、基本的に古くなった水道管(老朽管)の更新・入れ替えを計画的に進めています。
その際、新しく布設する水道管は、すべて「耐震管」を使用しています。
「耐震管」とは、地震の際でも、管と管を接続する継手部分に伸縮性と離脱防止機能を持たせて、継ぎ目の接合部分が離脱しない構造となっている水道管です。
耐震機能を有していない水道管は、地震が発生したときに、伸縮性がないものは継手部分がゆがんで破損する恐れがあり、離脱防止機能がないものは管が引っ張られて抜けてしまう可能性があります。
また、耐震管以外の水道管であっても、埋め立て地や盛土でなく、液状化の可能性のない「良い地盤」に埋設されたものについては、耐震性があると評価できる場合があります。
水道管が布設された地盤も考慮すれば耐震性があると評価できる管を、「耐震適合管」(耐震適合性のある管)と言い、耐震管もこの中に加えられます。
箕面市の全管路の耐震化の状況は、次の表のとおりです。
箕面市内には、市が設置・管理している水道管が、平成30(2018)年度末時点で全長約 513 キロメートルにわたって張り巡らされています。
このうち、耐震管の割合はまだ18.5パーセントで、地盤を考慮した耐震適合率でも26パーセント程度です。
水道管の耐震化については、決して高いと言える状況ではなく、まだまだ耐震化を進めていく必要があります。
もちろん、この水道管すべてを新しく入れ替えて素早く耐震化できれば良いのですが、そのためには莫大な費用と期間が必要です。
そこで全国的にも箕面市でも、災害時に重要な拠点となる避難所や病院などに水道を供給する水道管や、幹線道路に埋設されている水道管など、重要度・優先度、影響度などを考慮して、計画的に更新を進めています。
これら重要な水道管や影響度の大きい水道管を優先的に耐震化していくことによって、災害時に広範囲で水道管が破損し漏水・断水が生じても、影響区域をできるだけ縮小できるとともに、最低限、避難所や病院等までの給水が確保できるようになります。
また、優先度を考慮した耐震化の指標のひとつに、「基幹管路」があります。
基幹管路は、「導水管+送水管+配水本管」です。
全管路は、「導水管+送水管+配水本管+配水支管」です。
配水支管は、「配水管のうち、直接給水装置を分岐するもの」とされています。
ややこしいですね。
「河川や井戸」→「浄水場」へ原水を送る管が、「導水管」です。
「分岐」「浄水場」→「受水場」「配水地」に浄水を送る管が、「送水管」です。
「配水地」→「各ご家庭」に浄水を送る管が、「配水管」です。
この配水管も、「配水本管」と、そこから枝分かれして各ご家庭内の水道メーターに直接つながっている「配水支管」に分類されます。
箕面市では、平成30(2018)年度末時点で、「導水管」4,384メートル、「送水管」25,920メートル、「配水本管」16,154メートル、「配水支管」466,205メートル。
合計512,663メートルが、全水道管路の総延長です。
なので、箕面市内の基幹管路は、46,458メートル、配水支管は、466,205メートルとなります。
基幹管路は、水道全体の上流部に位置し、破損した場合に影響が大きいため、特に重要な管路です。
箕面市の基幹管路の耐震化の状況は、次の表のとおりです。
基幹管路の耐震管割合は、42.8パーセントで、地盤を考慮した耐震適合率は、43.1パーセントです。
なお、テレビや新聞などで、よく水道管の「耐震化率」のニュースが出ますが、その数値が、「耐震管割合」なのか「耐震適合率」なのか、水道管が、「全管路」なのか「基幹管路」なのかで、数値が異なります。
また、大阪府の平均値も、大阪市や企業団などを含む場合と含まない場合がありますので、統計資料を見るときには、注意が必要です。
【水道管の工事の様子】
●基本・実施計画に基づいて
箕面市は今後も、「箕面市上下水道施設整備基本・実施計画(平成29年3月改訂)」に基づき、計画的・着実に水道施設・水道管の更新・耐震化を進めていきます。
この計画では、「水道料金を値上げすることなく、施設・管路の耐震化・更新事業を実施するための資金を確保する」ことを基本方針としています。
具体的には、平成27(2015)年度から令和16(2034)年度までの20年間で、水道施設の整備・再編・強化等に必要な建設改良費を、約162億円と試算しています。
このうち、主に水道施設・管路の更新・耐震化を実施するための資金として、20年間で約147億円を確保する目標となっています。
つまり、現行の水道料金を値上げすることなく、黒字経営を堅持し、かつ、水道施設・水道管の整備・再編や、更新・耐震化に必要な財源として、毎年度8.2億円を確保していくというミッションです。
そのためには、利用者サービスの質と独立採算の両方を重視し、収益と投資のバランスのとれた効率的な健全経営を継続していくことが不可欠です。
今後ともさらなる経営基盤の強化に努め、安全、安心、安価で良質な水道水の安定供給を全力で推進してまいります。
現在の水道を適切に維持することはもちろん、20年先、さらには50年先、100年先の世代までを見据えて、安定して水道水をお届けしていけるよう努力し続けることが、今を生きる私たちの責務です。
●災害に備えて、ぜひ水の備蓄を!!
箕面市内の水道施設・水道管のすべてを耐震化できるまでには、まだまだ相当の期間が必要です。
一方、地震は、いつ発生してもおかしくない状況です。
そのために、どうか皆さまご自身でも、災害に備えた「3日分の水の備蓄」を習慣づけていただきますよう、切にお願い申し上げます。
特に飲料水は、ひとり一日3リットル必要なので、
「一日 3 リットル× 3 日分× 家族の人数」の飲料水を、ぜひ備蓄しておいてください。
さらに、トイレや洗濯などの「生活用水の備蓄」や、給水拠点に水をくみに行くための「ポリタンク」も、普段から用意しておくことが有効です。
災害による断水経験者によると、何本かのペットボトルやポリタンクなどに水道水を入れて置いておく方法が、生活用水の備蓄として推奨されています。
災害直後には、ペットボトルやポリタンクが売り切れて買えない事例が頻発しています。
また、お風呂の水を抜かずに、いつも貯めておく方法もあります。 この場合、小さなお子様が浴槽に落ちないよう十分注意してください。
箕面市のホームページ「防災~今すぐ始める家庭の備え」も、ぜひご覧ください。