こんにちは。健康福祉部長の小野啓輔です。
箕面市役所も、5月末です。
新人職員も職場に慣れ、無事5月病も乗り越え、
本格的に仕事をしています。
部長ブログのライバル、新人ブログも
順調にデビューが続いています。
箕面市役所では、新人職員に福祉体験研修を実施しているため、
あかつき福祉会わんすてっぷやパンハウス・ワークランド、ぐりーん&ぐりーん、
たんぽぽ共働事業所、障害者事業団、豊能障害者労働センター、
稲デイ、あっとほーむなどの記事が、新人ブログで続々と紹介されています。
ぜひ一度、ご覧ください。
また、6月の恒例、「歯のつどい・歯の健康展」も開催されます。
6月9日(土曜日)の午後1時30分から4時までは、
箕面市総合保健福祉センター(ライフプラザ)にぜひお立ち寄りください。
子どもさんのむし歯菌チェックやスタンプラリーなど、
楽しくて役に立つイベントが盛りだくさんです。
くわしくは、こちら。
●生活保護制度を考える
さて、ある高額所得の芸能人の母親が生活保護を受給していたことが、
全国的な話題になっています。
週刊誌から広がり、国会議員がとりあげ、
芸能人本人の記者会見があり、マスコミがこぞって報道しています。
かつて生活保護制度が、ワイドショーをはじめ、
これだけ連日マスコミをにぎわすことは少なかったのですが、
多くの人が、生活保護制度を考えるきっかけになりました。
一連の騒動は様々に波及し、これまであまり語られなかった生活保護制度の
負の部分も公となり、制度の見直し機運も高まっています。
マスコミなどでコメントしている皆さんの反応は、概ね次の2つに集約されます。
(1)貴重な税金で運営されている生活保護は、適正に運用すべきだ。
本来、生活保護が必要ないはずの人が生活保護を受けているのは許されない。
国民は、生活保護を受けなくても生活できるよう、自ら努力すべきだ。
厳格に運用しないと、生活保護費はますます増大し、制度が破綻してしまう。
(2)今回の騒動で、本当に困窮している人に生活保護が届かなくなって
しまわないか心配だ。憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」
最後のセーフティネットは堅持すべきだ。景気対策や就労支援など、
貧困からの脱却政策こそが重要だ。
さて、行政としては、両方の観点とも重要です。生活保護を担当する現場では、
常に憲法に基づく最低限度の生活保障と、税金の適正な執行という命題を踏まえ、
複雑・多様化している生活課題を抱える様々な世帯と、日々真剣に
向かい合っています。
●生活保護の動向
ここ数年、生活保護の受給者数は、大きく増加しています。
厚生労働省によると、今年2月に全国で生活保護を受給した人は209万7,401人。
これまで過去最多だったのは、戦後の昭和26(1951)年度で、204万6,646人でした。
その後減少を続け、平成 7 (1995)年度には、88万2,229 人となりましたが、
この年を底として増加に転じ、平成23(2011)年7月には、過去最多を上回り、
以降、毎月連続で過去最多を更新しています。
そのために必要な金額も当然増加を続け、平成24年度の国の当初予算では、
生活保護費は年間約3兆7,232億円となっています。
厚生労働省は、平成25年度には40%増の5兆2,000億円に増大するとの
試算も発表しています。
箕面市でも、傾向は同じです。
平成24年4月の受給者数は、1,136人。
市民の約0.8%の人が、生活保護を受けています。
府内の市のなかでは、保護率は最も低い市です。
保護率が日本一高いのは大阪市で、市民の5.7%が生活保護受給者です。
しかし、箕面市でもここ数年、毎年10%程度、受給者数が増加しており、
伸び率は、府内でも高いほうに位置しています。
平成24年度当初予算では、箕面市の生活保護費は年間約18億円で、
そのうち国が4分の3、市が4分の1を負担しています。
●そもそも生活保護制度って、どんなもの?
生活保護制度は、日本国憲法第25条 に規定する「すべて国民は、健康で文化的な
最低限度の生活を営む権利を有する。」の理念に基き、
国が生活に困窮するすべての国民に対し、困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、
最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする
制度です(生活保護法)。
生活保護費の具体的な金額ですが、
厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、
収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が
生活保護費として支給されます。収入としては、就労による収入、
年金等の社会保障給付、親族による援助等を認定します。
最低生活費は、住んでいる地域や世帯の構成などで異なりますが、箕面市の場合、
例えば、60歳〜69歳の単身者の制度上の最低生活費は月額約12万円、
小学生2人の子どもがいる母子世帯の最低生活費は月額約26万円、
箕面市での最高額は、夫婦で子どもがたくさんおられる場合、
最低生活費は月約45万円にもなります。
この最低生活費から、毎月認定した収入額を引いた差額が、
実際に支給される生活保護費です。
しかし、昭和25(1950)年の制度創設以来、抜本的な改革がなされないまま今日に
至っており、社会経済情勢の変化に対応できておらず様々な問題や矛盾が山積し、
もはや制度疲労を起こしているとも指摘されています。
特に、生活保護受給者の増加傾向は歯止めがかからない状況であり、
生活保護からの自立・脱却が、うまく進まないケースが増加しています。
また、いわゆる「孤立死」の問題。生活困窮状態であるにも関わらず、生活保護制度に
うまく結びつかなかった事例が全国各地で見られ、無縁社会・孤立化が進行している
現代社会の問題点が浮かび上がってきました。
一方、不正受給の問題も全国的に発生し、
さらには、最低賃金や年金と生活保護の最低所得水準との逆転現象は、
「40年間払い続けた国民年金より、生活保護のほうが受給額が多いのはおかしい」
「働いてもどうせ賃金は低いから、生活保護をもらわないと損」など、
国民の不公平感やモラルの低下を招いています。
●生活保護制度の問題点〜様々な制度疲労
生活保護法では、生活保護の要件として、「保護は、生活に困窮する者が、
その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の
維持のために活用すること」を定めています。
生活保護を受けるには、
(1)資産の有無、(2)親族で助けてくれる人がいるかどうか、
(3)年金などの他制度の活用、(4)本当に働けないか、という
4つの代表的な基準があります。
例えば、貯金などの資産があるのに隠して生活保護を受給するとか、
実際には収入がありながら「ない」と偽って申告するとか、
働き始めても収入を隠して保護を受け続けるなどが、不正受給とされます。
また、暴力団員の生活保護申請は国の通知に基づき原則として却下することに
なっています。
さらに最近では、生活保護受給者をアパートに囲い込んで保護費をピンハネするなど、
生活保護制度をビジネスとして悪用し、不当に搾取・着服する「貧困ビジネス」や
「なまぽビジネス」などと呼ばれる悪質な業者も出現し、
生活保護制度を食い物にしている例が、全国的に発覚しています。
大阪府では、生活保護受給者等に対する住居・生活サービス事業の公正な
取引ルールを定める条例を制定し、この問題に対処しています。
不正受給は、法律に基づき費用徴収や保護の廃止もできますが、
悪質な場合には、罰則の適用、さらには刑法(詐欺罪など)で対応することになります。
しかしながら、実施機関である全国の市福祉事務所では、
不正受給を未然に防止するための調査権限や体制が十分ではなく限界があるため、
法制度として、不正ができない実効性ある仕組みづくりを国に求めています。
なお、扶養義務者の扶養は、生活保護法では「民法に定める扶養義務者の扶養
及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して
行われるものとする。」とされています。
今回の芸能人のケースでは、不正受給とまでは言えないものの、
この扶養義務者による扶養の度合いが、社会的・道義的に適切だったのかが
問われたものです。
●より適切な制度創設に向けて〜国への制度改革要望
「まじめに正直に生きている人が報われる社会」にしていく上で、生活保護は
本当に困窮している人にはしっかり届き、
働ける人は頑張って働いて生活保護から脱却していける、
そんな制度であり、世の中にしていかなければならないと思います。
そうなっていない現状や課題を、しっかりと国に向け発信し、
制度改革を実現していく必要があります。
箕面市では、大阪府市長会、近畿市長会、近畿ブロック都市福祉事務所長
連絡協議会などを通じ、この制度が最後のセーフティネットとして
真に生活に困窮する人へ適切に保護を適用する、あるべき姿となるよう、
基準額や保護要件・実施要領の見直し、就労への意欲が働く制度設計、
実施機関の調査権限の強化など不正受給防止、
雇用・労働施策や就労支援の確立、貧困ビジネスの排除など、
制度的な問題点の改善・抜本的な対策を、国に対し強く要望しています。
国は、生活困窮者対策と生活保護制度の見直しについて、総合的に取り組むための
「生活支援戦略(仮称)」を、今年の秋を目途に策定すると発表しており、
今後、その動向が注目されます。
今回の騒動が、その動きを加速することは間違いないでしょう。
●PS
この「PS」は、追伸ではありません。パーソナル・サポートの略です。
パーソナル・サポートとは、生活の中で何らかの困難を抱え、孤立しつつある方に、
「パーソナル・サポーター」と言われる相談員が継続的に支援を行い、
生活面や就労面など、一人ひとりのニーズや状況に応じた細やかな支援体制を
めざす方策です。
内閣府が検討・推進していますが、平成23(2011)年4月から、
箕面市でもモデルプロジェクト事業としてサービスを実施しています。
その特徴は、「伴走型・寄添い型」の支援。
制度で縦割りになりがちな行政相談に留まるのではなく、
相談者の立場に立って、民間の柔軟性も活かしながら、パーソナル・サポーターが
横断的に動くという「人によるワンストップサービス」をめざす実証実験です。
支援段階には、様々な支援プログラムがあり、自立に向けてのスモールステップを
パーソナル・サポーターがコーディネイトします。
現在、全国で27か所がモデル事業を実施中。
そこで、全国の取り組み実践をお互いに学びあうため、
「パーソナル・サポート・サービス全国交流研修会」が
6月1日、2日に箕面市で開催されますので、ご案内します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
パーソナル・サポート・サービス全国交流研修会inみのお
(1)日程、内容
平成24(2012)年6月1日(金)14:30−19:30
・事例検討
・講演「地域のなかで受けとめる、つなぐ、支え合う〜中核地域生活支援センター
の実践から」
講師:朝比奈ミカさん(中核生活支援センター「がじゅまる」センター長)
・意見交換会
・交流会
平成24(2012)年6月2日(土)9:00−12:00
・パネルディスカッション
・北芝フィールドワーク(1時間程度)
(2)会場:箕面市立萱野中央人権文化センター(らいとぴあ21)3階 ホール
(3)定員:100名
(4)問い合わせ、申し込み
特定非営利活動法人 暮らしづくりネットワーク北芝
(箕面市パーソナル・サポート・サービス受託者)
〒562-0014 大阪府箕面市萱野1-19-4
箕面市立萱野中央人権文化センター(らいとぴあ21)内
TEL:072-722-7400 FAX:072-724-9698
E-MAIL:shinomiya@raipi.org
箕面市では、4月から5月まで「みんなで乗ろう!オレンジゆずるバス まちのどこへでも 365日、毎日運行中!」統一キャンペーンを実施中です。